溶融塩浴流動粒子カソードプロセスによるCO2からの機能性炭素材料の生成と形態制御

夏井 俊悟
(北海道大学 大学院工学研究院 助教)

2017年4月24日月曜日

2017JapanPrize祝宴会の舞台裏

 遅ればせながらですが、日本国際賞の授賞式ならびに祝宴会に参加させていただきました。天皇・皇后両陛下のご臨席をのもとで開催されるのはご存知の通りですが、前年度の助成対象者として、この大イベントにご招待いただくという光栄に預かることができました。このような機会を頂き、本当にありがとうございました。

 さて、ホテルニューオータニでの非常に格調高い祝宴会、当然ですがとてつもなく緊張しました。日ごろ着慣れていないブラックタイ着用、日本の中心赤坂の見事な会場、終始奏でられる弦楽五重奏の生演奏、煌びやかなシャンデリア、最高級のお料理、100人位?と見紛うウエイターさんの行列と一糸乱れぬサーブ...。シャンパンが美味しかったせいか、このような場所に立っているのだという感動に酔いしれて、記憶もおぼろげながら、時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました。

 しかしながらその舞台裏では、また別な感動がありました。ウェルカムパーティの席での昨年度受賞者の皆さんと情報交換です。こんなに多くの、各学会で活躍される若手研究者と交流する機会は滅多にないです。伊東先生からはネパールでの取材研究と中央アジア国境の状況、阪本先生からはモリーユ(アミガサタケ)茸の生態とフレンチ食材としての利用、奥村先生は化学工学の若い人材の教育についての熱い想い、などなど本当に奥深いお話にあーすごいなぁ、人間の視野は交流によってこんなに広がるんだと感動しました(月並みですが本当です)。負けずに溶融金属の世界を深めていきたいです。そして皆さん家族との時間を本当に大切にしているのがわかりました(30歳付近の男子もこれでなかなか複雑な年頃ですから、意識共有できる同期友人が増えたと勝手に喜んでいます)。
 また是非どこかでお目にかかりたいと願っております。どうもありがとうございました。

 

左から鈴木先生、阪本先生、伊東先生、夏井、信川先生
(阪本先生の奥様に撮っていただいた写真です。皆さんアップしていない?ので、使わせていただきました。ご容赦…)

奥村先生と一緒に
(奥様、当日は大変お世話になり、ありがとうございました。)

2017年1月9日月曜日

ミステリアスな金属の霧?

 新年明けましておめでとうございます。北海道大学の夏井俊悟です。

 9月17日に開催された、第281回やさしい科学技術セミナーが無事(?)終了してから3ヶ月以上が経ちました。科学セミナー形式とは初めての経験で、その役目を十分果たせたか不安でありますが、小倉様、中原様、母校の皆様の温かいご支援を受け、とても良い経験をさせていただいたと思っております。改めて御礼申し上げます。

 ここでは、少しですが後日談として、十分にお伝えできなかった”高温融体”の魅力を書いてみます。

 セミナーの内容は、この3年間取り組んでいるテーマ”高温融体界面の流れ”について、その魅力を紹介できたらという思いから策定したものでした。自然現象のなかにある流れを直接人間の目で観察することは、大変基礎的ですが、諸現象の物理的な把握を容易にするだけでなく、現象の理解を助けるのにとても優れた方法です。 特に高温融体(液体の金属、塩、酸化物など)の場合、内部で何が起こっているか本当にわからないことが多いです。

 例えば、高温で溶融した塩に電圧をかけると、水と同じように電気分解が起こります(よく知られている溶融塩電解です)。電流の値を観測することでどのくらいの量が反応したかがわかります。でも、それだけでは電極の周りで何が起こっているのか実は十分に理解することができません。

 その一例を示します。高温で液体の塩化リチウム(LiCl)を電気分解すると塩素とリチウムに分解されます 安田幸司先生が講習会で大変詳しくご説明いただいた内容ですが、下の写真はリチウムが発生する陰極側をカメラで撮影したものです。(ちなみに陽極側では塩素ガスが発生しています)

 この実験は約450℃の透明な溶融塩(塩化リチウムは塩化カリウムで薄めて融点を下げています)の中で行ったので、リチウムという金属は融点180℃の美しい光沢をもつ液体になります。しかし、よくみると電極周りには青い霧、そして沖合いの方は灰色の霧が湧き上がって、そして幽霊のように消えていくのでした。溶融塩はリチウムの溶解度を持つので、溶けるというのは当たり前ですが、この霧自体の正体は未だによくわかっていない…。何しろ文字通り霧のように消えていくのですから、捉えようがありませんし、すくい上げても一瞬で酸化してしまいます。1895年、ローレンツが初めて発見したこの霧の正体は、1世紀以上もなお議論され続けるミステリーです。

 この金属霧はきわめて強力な還元剤で、ほぼあらゆる酸化物を還元します。二酸化炭素でさえも還元してアモルファスカーボンをつくることがわかっています。

 溶融塩中の金属霧は水と油(エマルジョン)のように考えることができます。つまり濁っている状態のことです。水と油のような交じり合わない液体は、液滴が分散しても界面張力が約50mN/mと大きいため、合体することで界面の表面積を小さくするほうが安定で、最終的に2相分離します。つまり2液相間の界面張力が低いほうが、微粒子として安定です。

 液体リチウムはきわめて酸素とよく反応するため、溶融塩中にある酸化物イオンと速い速度で結びつき酸化リチウムとなって、リチウム表面に生成します。液体リチウムと塩の界面に酸素が配位すると、界面張力の著しい低下が生じます。この界面張力の低下は、微視的に見れば不均一なので、局所的な差が界面の振動と拡張を引き起こしてリチウムの微粒子が形成されます。この微粒子に酸化物がイオン化して配位することで安定なコロイドが形成する、と考えられ、これが霧の正体と考えられるのです。ただしこれはコロイド生成の立場からの一説で、議論の余地があります。

 単純と思われる現象の中にも実は複雑なメカニズムが隠されていることはたくさんあります。とくに界面の流れはその代表格だと思います。わかっているようでわかっていない。私たちは金属霧の発生と溶解をローレンツの時代から100年経って進化した機材を利用してつぶさに観察し、高速なコンピュータで丹念に解析してあげることで、成果を少しずつ出しています。一歩ずつでも些細なことでも新しい発見を、そして応用につなげていけたらと思っています。

2016年6月1日水曜日

Seattle visiting

こんにちは。
北海道大学大学院工学研究院の夏井俊悟です。
このたび国際科学技術財団のご厚意で私の普段の研究生活をこのような形で皆様にご紹介できる機会をいただきました。
皆様にとって有用な情報を提供できるか多少心配ではありますが、気軽に楽しんでいただければ幸いです。

今回は、ちょうど海外出張から帰ってきたばかりなので、少し紹介させていただきます。
5/22-25にアメリカのシアトルで開催された10th International Conference on Molten Slags, Fluxes and Salts (MOLTEN2016)に参加してきました。
http://www.tms.org/meetings/2016/molten16/home.aspx#.V06SsPmLRD8

シアトルはご存知の方も多いとは思いますが、航空機のボーイング社やITのマイクロソフト社、amazonなど多くのハイテク産業を排出したエメラルドシティと呼ばれる街です。
また、シアトル系コーヒー発祥の地でもあり、スターバックスコーヒーの1号店もあります。
メジャーリーグ好きの方にとっては、青木・岩隈両選手が所属するマリナーズが有名ですね。

 

space needleと呼ばれるシンボルタワーや現代アート美術館など、それほど広くない街にたくさんのオブジェがひしめいていました。

さて、そんな世界的な都市で開催されたMOLTEN2016の会場は、Grand Hyatt Seattleという歴史のある非常に趣のあるホテルです。
このMOLTENは、高温融体を利用した金属と素材生産の持続可能性(サステナビリティ)をテーマとした材料工学の代表的な国際会議として知られています。
会議の主要目的は、近年の乾式製錬技術、高温融体物性、低炭素化、レアメタルリサイクルに関する知識を共有するためのフォーラムを複数提供することで、私が専門とする低環境負荷を目指したプロセス開発に関する最近の進歩とそれに関連した技術展開、経済的利点についても議論の対象でした。
今回大会では250件を超える発表がありました。

私は、金属融体と酸化物融体との界面形状と流れに関する近年の研究成果を発表し、当該分野を専門とする各国の研究者から種々議論いただきました。
発表内容は、すでに論文も掲載されておりますので、ご興味があればそちらもご覧いただければ嬉しいです。
S. Natsui, et al., Metall. Mater. Trans. B, 47(3), 1532-1537, 2016.
http://link.springer.com/article/10.1007/s11663-016-0618-9
S. Natsui, et al. Chem. Eng. Sci., 141, 342–355, 2016.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0009250915007356

発表後には、世界的に活躍される研究者から貴重なアドバイスを得ることができました。
また、カナダのMcMaster大学Prof. Coleyの研究室で行っている脱リン反応を伴う融体界面のin-situ観察というホットな研究発表を議論したり、ベルギーのumicore research社の方と至近の数値流体力学(Computational Fluid Dynamics, CFD)のソフトウェアに関する情報交換の機会も得ることができ、文化交流としても大変有意義でした。

 

発表会場と私の発表の様子です。やや緊張気味の様子がわかりますね^^;
これは質問に答えているときだと思うのですが、発表よりも質問を受けたときのほうが緊張します。
しかしそれは、遠路はるばる学会に来た一番の収穫、もっともエキサイティングな瞬間でもあります。
それは、普段研究室で議論している内容とはまったく異なる、思いもかけないことを聞かれることがしばしばあるためで、新たな研究の着想を得たりすることも多いのです。
私はこの学術界に身を置いて日が浅く、まだまだ経験不足ですので、これからも積極的に「国際的な科学技術」の進歩に少しでも貢献できるように頑張っていきたいと思っております。

雑駁な文章になってしまいましたが、お目通し頂いてありがとうございました。
また機会を得て、執筆させていただきたく思います。